愛しの君がもうすぐここにやってくる。


少ししてシンデレラも戻ってきた。

彼女は半べそ状態で「靴が・・・」と繰り返していた。
靴?ああ、落としてきたってことか。

「それは大丈夫ですよ、王子様がその靴を持って必ずあなたを探しに来てくれますから」
私のその言葉にシンデレラはほっとした様子で微笑んだ。
「そうなんですか・・・。よかった・・・」

そして続けた。
「ありがとう、あなた方のおかげです。
なにかお礼を・・・」
そう言いながら何かを探すような仕草をする。

そして手を耳に当ててイヤリングを両方外し、時親様と私に片方ずつ渡した。
「これもまだ残っていたみたい。
よかったらひとつずつ・・・」

「これは・・・」
美しく紫の光を放つ、それはアメジスト。
そう、私がいつも大事に持っていた石。

急に涙があふれてくる。
そしてやっと思いだし確信した。
これまで時親様に感じていたやさしい温かい感じ。
それは今までずっと時親様と出会う前から私が感じていた、励まされていた、慰めてくれていた、この石からくるものと同じだということ。

「さあ、紫乃、帰りましょうか」
「はい」
帰る・・・、同じところに帰るということがこんなにも心躍ることなんて。

そう思うと同時に私と彼はもとの世界が違うから・・・。
帰ると言っても私にとっては本当の帰る場所ではないこと。

油断すると調子のいいことをまた考えてしまう。

浮かれるな、自分、と言い聞かせて胸が痛む。




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