愛しの君がもうすぐここにやってくる。
普通、大きな宴だと十数人で笙、竜笛、篳篥、箏、琵琶、鉦鼓とかいろんな楽器での演奏をするらしい。
でも私の場合は時親様と桔梗さんと私の3人だけだし、公のものでもそんなに大きなものではないし、ちょっとした趣味の集まりっていうか遊びのようなものだって言っていたけど。
でもそんなこと言っても。
もともとほかの誰かの琵琶を聞いてきたこともないし、だから当然自分の演奏をほかの演奏者と比べることもできていない。
上手いのか、下手なのか。
自分がどのあたりのレベルにいるのかなんて皆目見当もつかない。
とにかくそういうこともひっくるめて不安しかないってこと。
それでも桔梗さんが箏、私が琵琶、時親様が竜笛なんて、ちょっと楽しみっていう思いもなきにしもあらず、かな。
いや、いや、それでも緊張するものは緊張する。
「なんか演奏っていうか、そういうの、初めてだから・・・」
そう答えて余計に緊張してくる。
「当日は満月ですし、詩歌管弦の遊宴ということなので、こちらから招待させていただいた方々は紫乃様の演奏を聴きながらお酒を楽しまれたり、漢詩や和歌を吟じたり。なので、そこまで緊張なさらなくても大丈夫ですよ」
でも私が変な奴じゃないっていうために催すんでしょ?
だったら失敗なんか許されないのでは?
うーん、と唸りながらしばらく考え込む。