愛しの君がもうすぐここにやってくる。

「とりあえず、今夜は早くお休みになられた方がいいですよ。
時親様は方違えで明日には戻られますが、いつになるかはわからないので、明日は時間を見つけて紫乃様と私だけでも一緒に音を合わせてみましょう」

「はい、ありがとうございます。
・・・で、あの、時親様が方違えって・・・?」
わ、しまった、また私、時親様のこと聞いてるし。
もう桔梗さんにも私が時親様のことを気にしていることがバレバレかもしれない。

肩を落としため息つく私に桔梗さんはふっと笑って答えた。
「本当は今日、お戻りになる予定だったのですが。
今夜こちらへ戻られる方向が凶の方角になるので、違う方角にある晴明様の屋敷で泊めてもらってから、明日ここに戻られるのです」

「私ならそんなの気にしたこともないけど。
この時代ってなんだかややこしいですね」
それを聞いて桔梗さんはクスッと笑う。

「紫乃様、眠れないのでしたら重湯でも用意いたしましょうか?
温まりますよ。
最近では明るいうちは汗ばむこともありますが、夜はまだまだ冷えますし・・・」

桔梗さんって本当に気配りもできてすてきな女性だな。
「はい・・・、そうですね、ありがとうございます」

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