愛しの君がもうすぐここにやってくる。
それにしても宴は夜でよかった。
昼間にこれだけ着込んでしまうと結構辛かったかもしれない。
そう考えるとこの時代の女性ってすごいなあと改めて思う。
桔梗さんだって涼しい顔をして私の着物を着付けしているし。
「はい、終わりました。
とてもお似合いですよ」
そう言いながら桔梗さんは鏡を差し出した。
わ・・・、なんだか私じゃないみたい。
今まで着ていたものと全然違う。
そのせいか緊張感が増してくる。
桔梗さんに着付けをしてもらって、でもまだ始まるには時間はある。
さて、このままじっとしていても落ち着かないし琵琶でも触ろうかな・・・。
そのとき目の前を小さな影がすっと動く。
「ちょ、雀躍?」
「え?紫乃か・・・?」
雀躍はびっくりしたような表情をして私を見た。
「・・・なんか、紫乃ってそんなにきれいだっけ?」
その言い方にちょっとカチンときた。
「は?なに言ってんの、今更!」
「なんだ、中身は全然変わってないか」
頭の後ろで手を組んでため息まじりに言った。
生意気な奴。