愛しの君がもうすぐここにやってくる。

少し間を置いて時親様が答える。
「ええ、とてもよくお似合いですよ」

え、ちょ、似合うって?
真顔でそんなこと言わないでほしい。
ただでさえいつもより厚着になっていて暑いのに余計に暑くなってくる。

似合わないって言われたらどうしようって思ってただけに彼の意外な言葉でまともに時親様の顔も見ることができない。
似合うって言われてかーっとなってしまい、どう返していいのか、言葉が出てこない。

口から心臓が飛び出てしまいそう。

そんな私の気もお構いなしに
「今宵は月も美しく、宴もきっとよいものになるでしょうね」
まだ暗くなる前の空を見上げて時親様は言った。














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