愛しの君がもうすぐここにやってくる。
それからいくほどか時間が過ぎ空も暗くなり、白く見えていた月も金色に輝きはじめた。
いよいよだ。
御簾から見えたのは庭を挟んだ向こう側の部屋に招待されたひとたちの姿が見える。
ちょうど私のいる場所の上に月があるのだろう。
彼らは月を見上げながら食事やお酒を楽しんでいるようだった。
御簾のこちら側には箏を演奏する桔梗さんと琵琶を抱える私。
時親様はどこにいるのかわからないけれど。
姿が見えないとちょっと心細い。
招待されて来たひとたちは時親様と仕事で繋がっているひとたちで、緊張するようなこともないって言ってたけど・・・。
でも私のこと妖怪みたいに思っているのかもしれない。
変な奴って思っているのかもしれない。
そのうえ、もしここで失敗したら、せっかくこの場を設けてくれた時親様に申し訳立たない・・・。
どうしよう、そんなこと考えていたらまた緊張してきた。
「さあ、そろそろはじめましょうか」
隣に座る桔梗さんが声を掛けてきたけれど、私の耳には入ってこなかった。
いつも過ごしている場所だけど、知らないひとがたくさんいると緊張していつもの場所に思えなくなってくる。