愛しの君がもうすぐここにやってくる。

琵琶をやりたいと言ったあの夜。

帰れずひとりぼっちだと言った私に
「私がいます」
そう言ってくれた彼。

そして琵琶の条件に手習い、和歌も取り組むことを言われて、びっくりした私にふっと笑った時親様。

そんなことを思い出しながら、やさしい気持ちに包まれるような感覚のなか、演奏をする。
気付けば私はさっきまでの不安はすべて消え去り、このままずっと演奏をしていたいとまで思っていた。

そして奏でられた音はゆっくりと月へとのぼっていく。
私たちの音を受け取った月はより一層、輝きを増しているように感じる。

こんなにこころが温かくなる夜を過ごしたのは初めてかもしれない。











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