愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「あー、疲れたー・・・」
私は大きなため息をつきながら声にだす。
疲れたけれど、でも楽しかったな。
また演奏できたらいいな。
宴も終わり、私は心地良い疲労感に包まれながらぼんやりと御簾越しに月を見上げる。
少し雲がかかって演奏していたときよりも少し暗い。
ほんとは御簾を上げて見たいけれど、
桔梗さんから「今日はお客様が多くいらっしゃるので、明日まで御簾を上げるようなことはしないでくださいね」って言われたから。
大丈夫かなと思うんだけど。
さっきまでの賑やかな雰囲気も宴が終わるとまた屋敷は静寂に包まれる。
最初は不安ばっかりだけど、私が最後まで演奏できたのも彼がいてくれたから。
彼のやさしい声があったから。
お礼、言わなきゃね・・・。
私は月を眺めながら考える。
でもあの場に時親様がいなかったのに声が聞こえたとき、近くに感じて。
すごく不思議だったな。
それもやっぱり彼の不思議な力のせいだったのだろうか。