愛しの君がもうすぐここにやってくる。
なんて思った瞬間に遠くで雷が鳴り始めてびくっと身体が震える。
「うわ」
聞こえた音はまだ小さくて遠いみたいだけど。

これは本降りになったら当分やみそうにもないかもしれない。
帰るにしても傘もないし、移動するよりもこのまま桜の木の陰にいたほうがいいかな。
服についた雨粒を払いながら考える。

幸い、桜の木が大きかったから、少ししずくが落ちてくる程度でずぶ濡れになることはなさそうだ。
空と地面を交合に見つめながら考える。
暗い空といつの間にかできた水たまり。
雨はだんだんと本降りになってきた。
これはもう当分やみそうにないかも。

そう思った瞬間、
鼓膜が破れそうなくらいのすさまじい雷の音とともに

一瞬にして私は―――。

身体がふわっと浮くような感覚に陥った。
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