愛しの君がもうすぐここにやってくる。

「そのときに噂は本当で、時親殿は姫君と一緒に暮らしているのだと驚きました。
そしていつかお近くでお目にかかりたいと思っておりました」

笑顔で話をしているけれど、なんだろう、やっぱりちょっと違和感がある。
私が不審に思っていることに気付いているのか否か、その人は話を続ける。

「時親様が宴を開かれると聞き、私も招待を受けたかったのですが、叶わずにおりました。
しかしどうしても貴女にお会いしたく、こうしてこっそりと演奏を楽しませていただきました。
貴女のお姿をこうして確認できたこと、とても嬉しく思っております」

ん?確認できた?なに言ってんの?
このひと。
ほんどだれ?

「あの、あなたの名前は・・・?」

「ああ、失礼いたしました、智徳法師と世間では呼ばれております」

ん?このひとのこと知らないけれど、名前はどこかで聞いたことがあるような?

どこだっけ?

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