愛しの君がもうすぐここにやってくる。

はっきりと違うと否定すると今までのように一緒にいてくれなくなるかもしれないと思うとやっぱりどうしても言えなかった。

「・・・さっきまでにぎやかだったからかな、今は一層静かですね」
私はその話はもうしたくないから、時親様の言葉に返事することなく、そして彼に視線を合わせることなく、横を向いて別の話を始めた。
でもその後の言葉が続かない。

時親様は「そうですね」そう言って言葉を止め、そして少しして続けた。
「・・・どうされましたか?
いつもの紫乃らしくないような。
さすがにお疲れになったのかもしれませんね。
今夜はもうゆっくりとお休みになったほうがいいかもしれません」
そして静かに彼は立ち上がり、その場から離れていこうとした。

「ま・・・待って、待ってください」
思わず私は手を伸ばして彼の袖を掴む。
しまった、私なにやってるんだ・・・。

「どうされましたか?」
「私、私は・・・本当はお姫様とかそんなんじゃなくて・・・」
どうしよう、こうなったらもう言ってしまおうか。

時親様もそのままで止まり、次の私の言葉を待っているようだ。
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