愛しの君がもうすぐここにやってくる。
夕暮れ。
久しぶりに今日は午後から天気もよかったせいか夕陽もきれいに見える。
茜色の細長い雲に色がついて、その雲と太陽の境目がはっきりしてなくて、空全体が紅く、紫に。
鮮やかという言葉がぴったり当てはまる。
脇息に両肘を乗せ頬杖をつき、御簾をあげて外を眺める。
いつか帰るということは頭の隅で理解はしていたけれど、こうして過ごしていることに慣れてしまって、もしかしたらこのままここにいるんじゃないのかなって思うようにもなっていた。
でも雀躍が私の帰る方法の話を時親様がしていたって言っていたことで、やっぱり私のいる場所はここではないんだと。
いろんな思いがいったり来たりして、相変わらず時親様の姿を見ることもなく日々は過ぎていった。
桔梗さんの言うとおりで、忙しくしているからなのだろうか。
そういえば。
原田くんと付き合っていたときは、付き合っていたときでさえこんなに切ない思いになることもなかったのに。
ずっと忘れてた。
本当に好きだったのかな、今じゃもうわからないや。
あのときとても嫌な思いをしたはずなのに、今じゃその「嫌」という感覚もあの日々も遠いことのように思える。
嬉しかったことも悲しかったこともこんなに今ほど感情を揺さぶられることはなかった。