愛しの君がもうすぐここにやってくる。

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もう梅雨の終わりが近いのか、雨も静かに降るというよりも激しく降る日も多くなってきた。
今日もどんよりとした雲と雨の日。
なんだか私の気持ちがそのまま天気に表れているみたい。

いつも眺めているここからの景色。
はじめのころは変わらない景色に退屈だななんて思うこともあったけれど、最近では少しの変化に気づくようになり、その変化を見つけることもまた少し楽しく思えたりしている。

とか言っても憂鬱だな。
なんであのとき大嫌いなんて言ってしまったんだろう。
そう思ってため息をつく。

「最近、主様、あんまり元気ないんだよな・・・」
どこからともなく雀躍が姿を現した。

あの日以来、再び時親様と話をすることも会うこともなかったから、彼が今どういう状況なのかこうして雀躍から聞くまで知らなかった。

「時親様、元気、ない?」
雀躍の言葉を繰り返すようにして聞き返す。

「うーん、そういう、紫乃だって元気ないんじゃないのか?」
「そんなことあらへんよ、うん」
自分に言い聞かせるように私は答える。

「ケンカでもしたのか?」
そんなケンカとか・・・。
でもこんな中途半端な状態でいるよりもケンカできたほうがよかったかもしれない。

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