愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「それになんなん、あの「寵愛」とか。
どんな嫌味?
そんな存在とは思われてへんのに」
「・・・おい」
「ほんと、ふざけたこと言って・・・!」
「紫乃?」
「・・・は?」
だれ?私を呼んだ?上?
声の方を振り向くと天井に張り付いているなにかの影。
「あ・・・!雀躍!どうしてここに・・・」
「さっき別れたとき桔梗さんが離れるようにって慌てて言ってる声が聞こえて、またすぐに戻ったんだ。
そしたら2人が大きな影に連れて行かれるのが見えたから、追いかけてきたんだ」
そう言いながら雀躍は降りてきて縛られている私の縄をほどく。
「ありがとう」
「・・・ここって・・・知徳法師の・・・だろ?」
雀躍の表情は固い。
まあ、そりゃ、そうだろう。
以前、私に知徳法師とのことを話していたときに許せないって言ってたことを思い出した。
「あ、うん・・・、さっきまでここにいて桔梗さんと私を・・・」
「やっぱりあいつ、憎いよ、許せない」
そう言うと雀躍は少し開いた蔀戸の隙間から出て行こうとした。