愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「ちょ・・・」
私は小さな声で結界を破る雀躍の姿を見つめる。
ちょっと生意気で腹立つこともあったけれど、でも雀躍は根はいい子だし、やっぱりそんなわけわかんない理由で命を落とすとかあり得ない。
雀躍はまた知徳法師に向かって行こうとする。
私は思わずまた雀躍のそばに駆け寄る。
「紫乃っ!待ちなさい」
「紫乃様!」
私は時親様と桔梗さんの声を振り切って、雀躍の背中から覆うようにして身体全体を使って彼の動きを止める。
「雀躍!しっかりして!」
彼を後ろから捕まえてそう言うしかできなかった。
雀躍の力は大きくて私ひとりでどうしようもならないくらいだった。
「あかん!やめてや!
そんなわけわからへん理由で雀躍が潰れるとかあり得へんし!」
大きな声で言うけれど雀躍は力を緩めることなく、うなり声をあげながら私を引きずるようにしてゆっくりと知徳法師へ方へと向かう。
「おやおや、その小さな鬼の子と紫乃様、一緒にこちらへ来られますか?
ちょうどよかった、さあ、どのようにいたしましょうか?」
そう言って知徳法師は不敵な笑みを見せる。