愛しの君がもうすぐここにやってくる。

時親様、何かを投げた・・・?

知徳法師のほうを見るとその石のかけらが彼の目に入ったのか、彼は目を押さえていた。
「・・・痛い、取れない・・・」
時親様はその隙も見逃すことなく、知徳法師に向かって指を組み、宙に浮かせた五芒星が書かれた形代に向かって呪文を唱えた。
その形代は知徳法師の首に刺さり、そのままその場に崩れ落ちた。

私は怖くて雀躍を抱えたまま、その場にへなへなと座り込んでしまう。
時親様と人間の姿に戻った桔梗さんがゆっくりと私たちの方は向かってきた。
「もう大丈夫ですよ」
時親様は静かに微笑んで言った。

「ああ・・・、ありがとうございます・・・」
うつむきそう答えるだけで精一杯。

雨は次第に小雨となり、西の空が少し明るくなってきている。
どうやら天気は回復していくようだ。
少し明るくなった地面にキラキラと光る小さな欠片。
さっき時親様が矢を落とすために投げたもの、よく見ると紫色に光っている。

「これって・・・、アメジスト・・・?」
「アメジスト?
紫乃の世界ではそう呼ぶのですか?
この石は以前、彼の国の姫君からいただいたものです。
珍しい石だったので調べてみたのですが、この紫の石は邪悪なものから守ってくれる力が非常に高いものだということがわかりました。
紫乃を守るためならこの石はきっと役立ってくれるだろうと」
そう説明しながら座り込んだままでいる私に時親様は手を差し伸べてくれる。
私はその彼の手のひらに自分の手を重ねる。

< 180 / 212 >

この作品をシェア

pagetop