愛しの君がもうすぐここにやってくる。

「紫乃様、泥だらけになってしまいましたね、早く帰って着替えましょうか」
桔梗さんがいつもの優しい声で言った。

「・・・・・・」
時親様のアメジストが・・・。
私は地面に散らばる粉々になってしまったアメジストを見つめる。

桔梗さんの呼びかけにいつまでも動かない私を察したのか
「私は雀躍を連れて先に戻ります。
おふたりもお早めにお戻りくださいね」
そう言って私の腕の中にいた雀躍を今度は桔梗さんが抱いて、再び狐の姿になったかと思うと雀躍を背中に乗せて帰って行った。

「時親様のアメジストは・・・?」
「せっかく紫乃と同じものだったのですが、仕方ありません。
でもその石のおかげで紫乃が助かったのなら、それで十分です」
少し残念そうな表情で彼は言った。
「そう・・・」
同じものをもつ、彼もそう思っていてくれたんだ、そう思うと片方なくなってしまったことが仕方ないとはいえ、悔やまれる。
私は再び跪き、明るくなってきた空からの光が反射して、地面に砂に混じって粉々になってしまったアメジストを見つめる。

「これじゃもう・・・」
「いいのですよ」
時親様は優しく言った。
「でも・・・」
私は諦めきれず、そう言いながら地面を掌でそっとなでる。
そして視線の先の草むらに少し大きな光を見つけて思わず手を伸ばす。

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