愛しの君がもうすぐここにやってくる。

「これは・・・」
私は伸ばした手の指先に触れたものの周りに生える草を丁寧によけると、かろうじて形になっていた破片のアメジストを見つけることができた。

そしてそっと手に取り時親様に手渡す。
「こんなに小さいけれど、でも、ありました。
まだ、形のある時親様のアメジストです。
私と同じ石だから・・・お願いです、持っていてください」
そう言いながら涙がこぼれ落ちる。

「紫乃・・・」
時親様は小さく私の名前を呼んだ。
「本当によかった。
小さくても、欠片であっても見つかってよかった。
なんとなくこの石が時親様と私を繋ぐ唯一のもののように感じたから。
一緒に持っていてほしいんです」
私がそう言い終わるか終わらないうちに彼は私を引き寄せて抱きとめた。
「貴女というひとは・・・」
時親様の声。

「ごめんなさい、あのとき嫌いなんて言ってごめんなさい。
本当は私、時親様のことが好きです。
でもどうしても言えなくて・・・」
もう感情が抑えきれず、涙が止まらなかった。




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