愛しの君がもうすぐここにやってくる。
少し沈黙が続く。
えっと、なにか私から話したほうがいいのかな。
「御簾は・・・」清明様が先に言葉を発した。
「え?御簾、ですか?」
「いつも上げているのですか?」
「あ・・・」
あれは本当は全部降ろしてなきゃいけないんだけど、わかってるけど。
私がそれを嫌がったから、それで時親様が。
でもここの時代のルールでは降ろすのが当たり前だし。
時親様に許してもらったなんて言ったら時親様が怒られる?
一瞬にしていろんなことが頭の中でぐるぐると始める。
「えーっと、あの」
言葉を濁らせていると
「貴女のいた世界がどのような世界かはわかりません。
でも本来の、この世界ではこの世界のやりかたがあって・・・」
「ち、違います!
これはあの、私が時親様にお願いして無理して、それで・・・」
慌てて否定するも言葉が続かずに途中で消える。
清明様がふっと笑う。
「・・・彼らしいですね。
私たちの職業はまあ重宝がられることもありますが、中には気味が悪いと言う人もいます。
なので普段の生活の中ではいろいろ気遣うことも多いのですが・・・。
彼は普段からよかれと思うことは実行し、周りも全く気にしない人柄なのでね。
きっと貴女のために・・・」
貴女のために・・・。
その言葉に切なさがこみ上げる。