愛しの君がもうすぐここにやってくる。
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一昨日よりも機能よりも風が強くなってきた。
桔梗さん、雀躍、私、そして時親様と4人で庭に出る。
今日、私は帰る。
「もうすぐ雷がきて、少ししてから雨がきます。
その雨の降る前に帰ることとしましょう。
ちょうど紫乃がここに来た時刻と同じ時刻です」
「紫乃、本当に帰るんだな・・・」
少し拗ねたように雀躍が言った。
「立派な式になるんやで?」
聞えた声に振り向いて泣きたくなるのを我慢しながら笑顔で雀躍に言った。
「そんな悲しそうな顔しないでくださいね・・・」
桔梗さんがやさしく言った。
「桔梗さん、たくさん、いろんなことを教えてくれてありがとうございました」
私は深く頭をさげて唇が震えて泣きそうになるのをぐっと我慢する。
深く頭を下げたのは泣いていると思われたくないから。
きっと桔梗さんのことだから私のことを気に掛けると思うから。
今までこの時代で着ていた服装で過ごしていたけれど、今は学校の制服と通学リュック姿。
身軽になったけれど。
着物の重みは記憶をなくす私にとって、そのままここで過ごした思い出の重さなのかもしれない。
置いていかなければならない。
忘れたくなくても、どんなに願っても。