愛しの君がもうすぐここにやってくる。


そこからの私はどうなったのか。

見覚えのある、時親様のいる世界に行くとき、あのときと同じ不思議な空間に放り出された感覚。

その不思議な感覚の中で、時親様の横顔を思い出し涙がこぼれる。
「ああ、彼のこと、まだ覚えている・・・」

胸が痛み、心細くて時親様の持たせてくれた形代をぎゅっと握る。
手をつないでいるような感覚。

そして形代はそれに応えるように言った。
「・・・命のあるものは何度も転生し、そして生まれかわります。
私は必ず貴女を探し出します。
だからどうか泣かないで・・・」
耳元で囁くような彼の声が聞え、そして形代は消えていく。

同時に時親様と手が繋がれていたような感覚、少しずつ離れていく。

そしてぬくもりが遠くなる。









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