愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「あー、ついでに古典的と言えば午後から京都支社の支社長が挨拶に来るみたいよ。
まだ30歳代らしいんだけど。
でもそれで支社長なんてすごくない?」
「ふーんてか、なにが古典的なわけ?」
食べ終わった私は再びジャケットの袖口に指をもっていって、外れそうになっているボタンを触る。
「あんまり興味なさそうだね。京都と言えば古典でしょう?」
どちらかと言えばこのボタンの方が気になるんだけど。
「いやいや、考えてごらん?
この人がたくさんいる東京でさ、同郷の人と会えるんだよ?
しかも支社長!」
両手を頬に当てて興奮したように中西さんは言う。
「いや~それはイケメンだったら、って話でしょ?
会う前から想像膨らませてどうするの?」
肘をつき、ため息つきながら佐野さんが言う。
「確かに!」
私たち3人で顔を合わせケラケラと笑う。
「あーそうや、あと15分くらいあるやんな?
眠気覚ましにちょっと外のカフェでコーヒーをテイクアウトしてくるわ」
「了解」
「はーい、いってらっしゃい」
中西さんと佐野さんは手をひらひらと私に向けて振った。