愛しの君がもうすぐここにやってくる。

「わ、まぶしいっ」
思わず手を空にかざす。

中から外を見ていたときもまぶしいってことは認識していたけれど、こうして実際に外に出ると本当にまぶしい日差し。

こんなに気持ちがいいと昼からの仕事、なんだか睡魔に襲われそう。
ちょっと濃いめのエスプレッソにしようか。
会社の玄関を出て少し歩いたところはちょっとした桜並木になっている。
さっき11階からみんなで見ていたときは小さかったけれど、こうして近くで見るとやっぱりきれいだし大きいな。
きれいな青空と桜のピンク色。

うーん、でも地元のあの紅枝垂れ桜の木には負けるか。

そんなことを考えながら桜の木を眺めながら歩いていると、だれかと肩がぶつかってしまった。
「痛っ!」

ちゃんと前を見てなかった・・・。

「あ、すみません」
ぶつかったその男性が謝る。
と同時に私のジャケットのボタンが取れてしまう。
コロコロと転がっていくボタン。

「うわ、やっぱり外しておけばよかった!」
そう言いながら私はボタンを拾おうと屈む。

すると
「どうぞ?」そう言って、ぶつかった人が先に拾ってくれて私に渡してくれた。


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