愛しの君がもうすぐここにやってくる。
慌てて逃げるように社内に戻り、フロア近くのトイレに駆け込む。
そして鏡に映った息を切らせている自分に落ち着け、落ち着けと声を掛ける。
どうして?
初めて会ったはずなのに。
どうしてこんなに緊張するんだろう。
そして持っていたポーチからアメジストを取り出してぎゅっと握りしめ、心を落ち着かせようとする。
ゆっくりとアメジストを光に透かしてみる。
「あの人は・・・だれ・・・?」
アメジストに聞いてみるけれど。
当然、返事はない。
ただ、これからを予感させるようにきらりと美しく光るだけだった。
THE END