愛しの君がもうすぐここにやってくる。
式神?鬼っていっても角ないじゃないの。
で?お仕え?って?
なんだそれ?

雀躍は言葉を続けた。
「それから主様は…」
そこまで言いかけた時、何かに気づいたその子どもははっとした表情になった。
「え?どうしたの?」


「どうですか?少しは楽になりました?」
振り向くとさっきの女のひとがなにか持って戻ってきたところだった。

彼女は雀躍の存在に気付かないのかなにも言わない。
「あの、ここに小さな子どもが…?」
雀躍の方を指さして・・・、あれ、消えた?
「子ども?この屋敷には子どもはおりませんよ?
…ああ、でも、もしかしたら…
ここに来ることができた貴女なら見えたのかもしれないですね」

どう答えていいか分からずそのまま黙り込む私に
「さあ、行きましょうか」
そう言いながら私は別の部屋に通され、そして彼女は持っていた着物を丁寧に着せてくれる。

「今は特別なこともありませんから、袴と単衣、それから袿でいいと思います。
特別なことがあるときはこれに色を重ねて・・・ちょっと重たくなりますけどね」

そんな軽く言うけれど、いや、これでも十分重たいというか身動きが。
で?
なにかあるときはこれにまだ羽織るっていうの?
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