愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「あれは・・・ギターですか・・・?」
そっと指差して聞いたものの、ギターっていうにはあまりにも不格好だということに気付く。

「ギター?・・・それは一体なんでしょうか?」
不思議そうな顔をして桔梗さんが私の指差す方を見る。

「ああ、あれは琵琶ですよ?興味ありますか?」
そう言って彼女は少し離れたところにあった琵琶を取って戻ってきた。

よく見たら4弦、形も巨大化したなすびみたいだし。
ギターというにはちょっと程遠いか。

「どうぞ?」そう言って彼女は私のほうへ琵琶を差し出す。
う、重た…。
ずしっと感じたその重さに思わず顔をしかめる私。
そして彼女はくすっと笑う。

どうやって弾くんだろう。
そう思いながら音穴のところに挟みこむようにして片付けられていた、
しゃもじのようなものを取り出す。

「その撥(バチ)を使って弾くんですよ?」

彼女は私の側に来て弦が水平になるように、
琵琶を抱え直させた。
そして撥を持っている手を支えるようにして、
弦を上から下に弾きおろす。

じゃらあん、

うわ。

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