愛しの君がもうすぐここにやってくる。
その時、桔梗さんが私の元にやってきて言った。
「…今、主人が帰ってきたようです。
ちょっと出迎えに行ってきますね」

そう言って彼女は私の前にざっとスダレのようなものを降ろす。

「え?ちょっとなに?さっきも思ったんだけどこれって?」

「御簾ですよ?」そう言いながら、彼女は御簾の隙間から部屋を出た。
いや、それ別に名前聞いてるんじゃなくて、どうして遮断するようなものをわざわざ・・・。
その理由が聞きたい。

でも聞こうと思ってももう桔梗さんの姿はなく。
本当に彼女って不思議なひとだな。

桔梗さんが出て行った御簾を見つめながら考える。
それにしても「ご主人」って…どんなひとなんだろう。
私を助けてくれたって桔梗さんは言っていたけれど。

私は令和時代の人間で、この世界は多分きっと平安時代で。
きっとそれっぽい人が現れるのだろうか。
古典や日本史の教科書で見た平安時代の男性は・・・。

・・・・・・。
うーん、まあ、なんとも。
いやいや、笑ってしまったらどうしよう。

それにしても結局夢が覚める前に「ご主人」とやらに会うことになってしまう。
夢の中の登場人物は少ない方がややこしくなくていいから、早く目が覚めてしまえと思っていたのに。
桔梗さんから「主人」の話が出る前に眠ってしまえばよかった。

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