愛しの君がもうすぐここにやってくる。
人の感情なんて意図的にコントロールできるものじゃないけれど。

「原田くんってかっこいいね」なんて笑っていた彼女。
そんなことが前にあったっけ。
私はそんな彼女の言葉をあはは、なんて笑いながら聞いていた。

あのときもし私が「彼は私と付き合っているから」
そう言ったらどうなっていただろう。

それでも彼女は彼に告白したんだろうか。
どうして私はなにも言わなかったのだろう。
言えなかったのだろう。

情けないな、私。

「ふうん…。まあ、いいけどさ」
他人事だと思ってか、それとも私の本心に気付いたのか
いつまでも返事をしない私にカオリは無表情に答える。

「…ありがとね、付き合ってくれて…」
それでも私はカオリに感謝を伝える。
陽もだいぶ落ちてきて、ちょっとひんやりする。

この季節、寒暖の差が大きくて昼間は春だなって思っていても
まだなんとなく季節がまだ言うほど進んではないかなって思うこともある。
4月なのに。


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