愛しの君がもうすぐここにやってくる。
アメジストの石はなくしてしまったけれど、こうして声にして、言葉にして伝えて「大丈夫」、そう言ってもらうことで最近は安心できるようになってきている。
「時親様か・・・」
私はそう言ってふとまた初めて会った、あの夜の時親様の姿を思い浮かべる。
考えてみればあの夜だけしかまだ会っていないのに、なぜか彼の姿が私の脳裏をよぎることが多くなっている。
少しだけ会っただけなのに。
自分でも気付かないうちに気になってしまう存在になっているのはどうしてだろう。
そして一瞬感じたあの温かさ、どこかで感じたものと似ているんだけど。
・・・思い出せない。
でも・・・やっぱり彼は無表情なうえに性格もあまりよろしくないと思う。
桔梗さんが彼のことを呼び捨てにするのはよくないって何度も言うから「時親様」って呼んでいるけど。
だいたい「様」ってつけるのに値するくらいの存在なの?
「どうされました?」
桔梗さんの声にハッとする。