愛しの君がもうすぐここにやってくる。
本当にこの時代の女性は自由がない。
見たいものも見ることができなくて、やりたいこともなかなか・・・。
そして自分が指さす向こうにある紅枝垂れ桜を見ていると近くに行って見てみたいという衝動にかられる。
この先、散ってしまったら見て楽しむこともできない。
こんなにも気候もいいのにこんな薄暗い部屋でじっとしているなんてもったいない。
私の言葉に彼女も同じようにゆっくりと視線を外に向ける。
「外に出たい・・・ですか?」
眩しい外を見つめているままの私に桔梗さんは聞いた。
「いいんですか?」
思わず私は彼女に向き直り、大きな声で言った。
出たいって言ったってどうせ駄目だって言われるだろうと思っていただけに、彼女からその言葉が出てくるなんて、私はぱあっと顔が明るくなる。