愛しの君がもうすぐここにやってくる。
夕暮れの茜色。
なんとなくまだ冬を思い出させる。

視線を遠くへ向けるとさっきよりも頼りなく寂しい空の色。
だから太陽を見ても眩しくないし、かたちもおぼつかない。
空という海の中、周りも紅く染めて茜色がゆらゆらと揺れているようだ。

この空の色って過去も現在(いま)も未来もずーっと同じなんだろう。
私にとってそれは長い時間でも
例えば宇宙単位の時間からしたらほんの一瞬的で刹那的なものかもしれない。

そしてまた、例えば、ずっと昔。

今の私と同じように、同じ時間に、こうして空を見上げて、
思いを馳せていた人もいたのかもしれない。

思いを馳せていた人は何を思っていたんだろう。
何を感じていたんだろう。

流れる時間、季節の中。

あ、どうしたんだろう、夕焼けが光る。
胸の奥がなんか詰まった感じ。
喉の奥がなんか詰まった感じ。

なに?急にどうしたんだろう。あれ?私、泣くの?これ。
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