愛しの君がもうすぐここにやってくる。

「・・・!大丈夫ですか、しっかり・・・!」
少し乱暴だけどやさしいその声と同時に肩が揺さぶられるような感触がする。

そして私はゆっくりそっと目を開ける。

「時親様・・・」
月の光を背にしているから表情までははっきりとわからなかったけれど。
声のトーンから心配そうな顔をしているのかな、なんてぼんやりと都合のいいこと考える。

「ああ、よかった、わかりますか?」

「あ、え?」
そうだった、さっきまで庭の桜の木のところにいたんだっけ。
どうやら軒先のところまで戻ってきたようだった。
でもどうやって私、ここまで戻ったんだろうと思いながら再び確かめるようにあたりを見渡す。

そしてふと私の肩にある手に気づく。

「!!」

私、抱えられている?!

ここでやっと私は我に返った。
途端に心臓が急にドキドキして身体中が熱くなっていく。

「あっ、あのっ!」

大きな声に彼は「ああ、失礼しました」静かにそう言って、私の肩にまわしていた手を離す。

「あ、いえ、だ、大丈夫ですから」

そう答えるものの彼の顔をまともに見ることができない。
ダメだ、調子狂う。
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