愛しの君がもうすぐここにやってくる。
考えるほどにネガティブになっていく。
別の、なにか。

・・・ああ、そうだ。

壁に立て掛けてある琵琶がふと目に入った。
この際、琵琶のことを頼んでみようか。
次、いつ時親様と話できるかわからないし。

「あの、お願いがあるんですけど・・・」

「・・・なんでしょうか?」

前に桔梗さんが琵琶を弾く女性なんて、って言っていたっけ。
許可してくれるかな。
でも言うだけ言ってみるか。

「・・・琵琶を・・・」

どうしよう、桔梗さんがあんなこと言うから今更なんか緊張してきた。

「琵琶がどうしましたか?」

私がこんなにも緊張して言葉を考えて話をしているのに、彼は一瞬で言葉を返してくる。
それになんだか「どうかした」なんて言い方されたら、もうダメって言われているみたいでなかなか次の言葉が出てこない。
でも黙っていたって何も伝わらないしここは思い切って。

「えっと、あの・・・
琵琶を・・・、琵琶を弾きたいんです!だから・・・」

「琵琶?紫乃が?」

「えっ、あっ、は、はい・・・」

声のトーンが少し落ちる。

なんかダメそうな感じする。
私はうつむき、両手の指先を見つめる。

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