愛しの君がもうすぐここにやってくる。
今日だって疲れたとか言いながらももう何時間くらいやっているかわからないくらいになっている。
「ちょっと疲れたかな・・・」
私は和歌集から目を離し、もう一度大きく伸びをする。
そして聞えた声。
「おい、お前、随分と長い間ここにいるんだな?
いつまでこの屋敷にいるつもりなんだ?」
雀躍?
生意気、言い方がいちいち腹が立つ。
「声だけやなくて話あるやったらさっさと姿を現したらどうやの?」
登場の仕方が唐突だけどもう今では慣れてしまった私は多少のことでは驚かなくなり、声のする方を見ることなく答える。
私のそんな態度に雀躍も腹が立ったのか「ふん!」という返事とも言えないような答えと共に姿を現し、私の前に座った。
「あ、そういえばあんた、いっつも時親様と出かけてるんとちゃうの?」
桔梗さんの時親様は仕事で祓いによく行っているという言葉を思い出し、彼に仕えると言いながらどうしてここにいることが多いんだろうとふと思った。
「それは、まあ、ちょっと・・・、いろいろ事情があって」
私の問いかけに雀躍はさっきまでの勢いがなくなりばつの悪い表情で焦り始める。
そういうところ、まだまだ子どもなんだなって。
私も言ってしまえば子どもだけど。
「事情って?」
私の問いに雀躍はぽつりぽつりと話し始めた。