愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「ずっと前、
・・・母ちゃんが何も悪いことしてないのに、疑いをかけられたことがあってさ。
時親様ではない陰陽師が、かあちゃんを討とうとして、それを助けてくれたんだ」
「どういうこと?」
「陰陽師って鬼祓いをして、その鬼を式神にするということがよくあるんだけどさ」
「へー、そしたらその式神って家来みたいなもん?」
「簡単に言えばそんなもんかな。
忠誠を誓うって感じ。
まあ、陰陽師ってのもいろいろいて、主様のような官人の陰陽師もいればそうじゃない奴もいる。
自分の持っている呪法や占術を使って悪いことをする奴もいる。
・・・アイツ、知徳法師は大っ嫌い」
怒ったような言い方をする雀躍。
ずっと前って言ってるけど、今でも思い出すだけでそのときと同じくらいの怒りが出てくるのかもしれない。
表情がとても険しい。
「そんな自分の力を悪いことに使う奴っているんだ?
それで、雀躍のお母さんってどうなったん?」
「ああ、うん、元気。
母ちゃんは逆に助けてくれた主様の式になることを望んだけれど、親子で元気で一緒に暮らしてくれたらいいから必要ないって」
あの時親様がそんなこと言うとか、なんか意外な感じする。
いや、そんなこともないか。
そう思って無意識に今までの彼とのやりとりを思い浮かべる。