愛しの君がもうすぐここにやってくる。
幸せそうなやりとりなのに、どうしてこんなに悲しいのだろう。
とても優しいのにとても悲しくてやりきれない。
どう言葉で表現したらいいのか。
悲しすぎて目が覚めるっていうのも変だけど。
最近、悲しい同じような夢ばかり見てしまう。
そう、今日も。
目が覚めるとまだあたりは静まりかえり、東の空は少しだけ薄紫色。
夢の中には私は出てこないし、私には関係なさそうな夢。
でも自分のことのように悲しくて辛い。
夢の中に出てくるふたりは後ろ姿しか見えないけれど、たぶん私の知らないひと。
元からこの世界に自分の知り合いなんかいないし。
違う、正確には女性の声には聞き覚えがある。
どこだったのか、わからないけれど。
それにいつも同じような夢をみているからってそれで私がどうなるっていうのでもない。
でも気になって仕方ない。
しばらく髪に手をあてて塞ぎ込むように過ごしていたけれど、視線を外に向けるとさっきよりもうっすらとやさしい明るさの中、紅枝垂れ桜が風で少し揺れている。
近いうちに全部散ってしまうかな。
この時代の1日は早い。
陽が昇ると同時くらいからみんな動き始め、夕方には1日が終わるような、そんな感じ。
今じゃすっかり私もそんな生活に慣れてしまっている。