愛しの君がもうすぐここにやってくる。


「紫乃様、おはようございます・・・。
どうされました?あまり眠れませんでした?」
浮かない顔をしている私に桔梗さんが心配そうに聞く。

「あ、おはようございます。
眠れないっていうか、あの、実は最近・・・」
そこまで言いかけてやめた。
どうせ夢の中の話だし、説明する私にも意味がわからないし、困っているわけでもないし。

少しの沈黙のあと
「なんでもないです、大丈夫。
それよりも琵琶のためにも今日もしっかりと頑張らないと、ですよね」
そう言って笑った。

「・・・でも困ったことがあったらいつでもなんでも話してくださいね」

「はい・・・ありがとうございます。
あ、あの今日、時親様は・・・」
あ、やだ、なに聞いてんだろ、私。

彼が今どこでどう過ごしているのか気になる。

「もうお出かけになられていますよ」

「ただでさえここの人達って朝型生活なのに彼はそれよりも早いんですね」
起きたらいつもいないし、一体いつも何時から出かけているんだろう。

< 79 / 212 >

この作品をシェア

pagetop