愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「連絡が、あった?
この時代にスマホもなにもないのに予定変更なんてどうやって?」
不思議に思って桔梗さんに尋ねる。
「スマホ・・・?」
そしてまた彼女も私から聞く初めての言葉に不思議そうに聞き返した。
「あーっとえっと、私のいた場所で連絡手段とかでよく使っていたものです」
「ふふ、そうなんですね。
ここにはそのようなものはありませんけれど、時親様はいろいろと手段をお持ちですので。
遅くなると言っても・・・。
紫乃様のお食事と、それから時親様のお戻りにも合わせて、そろそろ食事の準備を始めますね」
「え?もう今から?」
「ええ、いつもそういうものですよ」
そう言って彼女は立ち上がる。
私がここに来てからこの屋敷での食事時間も私の時代に合わせてくれている。
本来この時代なら2食で夕方に夜ご飯になるらしい。
だけど私が困らないように、私が辛い思いをしないように日が暮れて夜になってから食事の時間をつくってくれている。
桔梗さんが言うにはこれも時親様が指示していると。
今の生活に慣れているって言っても気遣ってくれているから、私もこうして偉そうにも慣れた、と言えるのだ。
細かいところまで私に合わせてくれている。
「それでは・・・」
桔梗さんは部屋を離れて行った。