愛しの君がもうすぐここにやってくる。

彼女の姿が見えなくなると私は再び琵琶を手にする。
「まだもうちょっといいよね、早くもっと上手になりたいし」

教えてもらったことをもう一度復習のつもりで弾いていると、
「紫乃、1日でうまくなったなあ」
聞えた声と同時にどこからともなく雀躍が部屋にやってきた。

「あんたっていっつも突然来て、突然消えるんやね」
そう言いながらも最近は雀躍のことが可愛いなと思えるようになってきている。
時親様とのいきさつを聞いてから、なんとなくまだ幼い子どもなんだなって。

「なんか弾いてよ」
無邪気に笑いながら雀躍は言った。

「うーん、まだ曲らしい曲っていうのは・・・」

そのとき、風が吹いたのか、私の琵琶を持つ手を誰かがかすっていったのか。

「・・・?
今の雀躍?」

「なにが?
なんにもしてないけど?」

「なにかが触れていったような気がしたんやけど・・・」
周りをみるけれどなにもない。

「・・・・・・?」
ほらまた。
今、かすかに声が聞えたような。
だれ?
だれか私を呼んだ?


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