愛しの君がもうすぐここにやってくる。

彼は今日、予定が変わって帰りは早くないって・・・言ってなかった・・・っけ?
だから呼んでくるとか、無理なんじゃ・・・。

少しずつ陽も暮れてきて私の中で怖さが増してくる。

そして
「どうか・・・、私の・・・願いを聞いて・・・いただけませんか・・・」
また声が聞えた。
今度はさっきのかすかに聞えたっていうよりもそれは明確に。
悲しそうな女性の声。
その声は私が最近よくみる夢の中で聞く声と同じもの。
声が耳に届いてくるというものではなく、直接私の中に入ってくるような感覚。


・・・思い出した。
以前、夜中に紅枝垂れ桜の木に引き寄せられたときの、そう、あのときのお姫様だ。










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