愛しの君がもうすぐここにやってくる。
いつだったか、女房が寺社参詣をした際に途中で鮮やかな黄色一色、咲き誇る菜花(菜の花)の場所を見つけたという話を聞いて、私もぜひ一度、いつか行ってみたいと思っておりました。
それからいくつか季節が巡りまた春の季節。
そしてその女房がまたその場所へ行くという話を聞いて、反対されたのですが思い切って私がその女房になりすまし、寺社参詣をすることにいたしました。
「本当に女房が言っていた通りの鮮やかで眩しいくらいの黄色・・・」
私はひとりで吸い込まれるようにその菜花の中に入っていきました。
清原 真宗様がその場をお通りになったことも気付かず。
真宗様、それは美しい公達だと噂では聞いておりました。
私からは遠い存在で女房達から彼の話を聞くことがあれば、その日は1日それだけでとても嬉しく過ごすことができました。
決して会うこともできない遠くにいて、やさしく美しいひとだと。