愛しの君がもうすぐここにやってくる。
そんな真宗様が通りかかったということで、付いていた者達が慌ててすぐに私を呼び止めたのですが、私にはその声は届きませんでした。
慌てて私を呼んだのは、それはきっとこの場にいるのが女房ではなく入れ替わった私だとわかってしまうことで、いくら彼であっても掌侍が女房になりすますなんて、きっとお咎めを受けてしまう。
だから慌てて呼び止めていたのでしょう。
「あの、菜花の中にいる女性は?」
「・・・申し訳ございません」
脅えながら答える女房たち。
「だれだ?と聞いているのだ」
「それは・・・」
「答えぬのならよい、こちらから参ろう」
そして私たちは出会ってしまったのです。
菜花が咲き誇る日のことでした。