愛しの君がもうすぐここにやってくる。
わ、美味しそうな香りがする!
今日、たい焼きの屋台来ているんだ!

さっきまでのよくわからない気分を片付けて、
匂いに誘われて、たい焼きを売っている屋台へ神社の壁に沿って小走りで向かう。

肌に感じるなんとなく湿気を帯びている空気。
やっぱり雨になるのだろうか。
降る前に早く買って帰ろう。

軽トラックの荷台を屋台に改造した車が大通りから少し入った路地裏に時々来ている。
時々っていうのはおじさんの気まぐれ営業だから。

路地裏目指して歩いていると大きな桜の木が見える。
紅枝垂れ桜。
大きくて鮮やかな濃いピンク。

いつ見てもすごいなあ、樹齢何年くらいなんだろう。
それにしても、まだ満開だ。
こんな大きな桜の木の下にいるとなんだかお姫様になった気分。
くるくるとターンしながら
やっぱり桜を見ると春なんだなあって思う。

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