愛しの君がもうすぐここにやってくる。
どうか、私の思いを真宗様に伝えていただきたいのです。
あなたなら、私の思いを受け取っていただけると・・・。
なにこれ。
そんなの、そんなややこしい事情で私になにかできるわけないじゃない。
できない、と否定すると同時に直接このお姫様の思いが私の中に入ってくるせいか、なんとかしたいという思いも私の中にあった。
でも何を?どうしたらいいの?
だいたい清原真宗って?だれよ、それ、知らないし。
そのとき、背中に電気が通ったような鋭い痛みが走った。
「痛っ!」大きな声で叫ぶと同時に吸い込まれるような感覚が止まる。
「紫乃!そこから離れなさい!」
この声?時親様?
振り返ると時親様と息を切らせた雀躍が立っていた。
雀躍は「早くっ!」そう言って、立ち尽くしている私の手を引っ張り、紅枝垂れ桜の木から離れさせる。
同時に時親様がなにか呪文を唱えたかと思うと、お札のようなものに息を吹きかけ、木に向けて放とうとする。
私はそれを見た瞬間、なぜか「違う!」そう叫んで繋がれていた雀躍の手を振りほどき、紅枝垂れ桜へ向かって走り出す。
それから私は気を失ってしまった。