愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「紫乃様?気がつかれましたか?」
「・・・あれ?桔梗さん・・・、私」
そう言って起き上がろうとするけれど、身体がなんだか自由に動かないというか、痛いというか。
あ、そうだ。私、あれから・・・。
そして慌てて庭の方を見る。
紅枝垂れ桜の木はいつもと同じように小さな風を受け止めてゆらゆらと揺れていた。
あれは一体なんだったんだろう。
菜の君?清原 真宗?とか言ってたっけ。
それから時親様と雀躍が来て。
「もう3日眠ったままだったのですよ」
「え?3日も?」
そんなに長く眠っていたような気もなかったので、驚いて桔梗さんの顔を見る。
「紫乃様が眠っておられる間、時親様は紫乃様の様子をとても気にされていて。
あんなに心配そうにされる時親様は初めてで・・・」
私のこと心配してくれたんだ。
この時代に来て誰も知っている人がいなくて寂しくて、でも私のこと、心配してくれるひとがいる。
そう思うとひとりぼっちじゃないと実感できる。
嬉しい。