愛しの君がもうすぐここにやってくる。
私はこのひとに惹かれていくのだろうか。
いや、それだけは絶対にあってはならない。
自分の中でそう思っていても一緒の時間を過ごすことで、私のあってはならないという意思を持続させることができるのか。
だいたいなにがあってもこの先ずっと私と彼が一緒にいられるなんてあり得ないのだから。
だったらあのお姫様は…?
せっかく同じ世界にいることができていたのに。
『本当の想いをお伝えすることもできずに』・・・。
そうしたらせめてあのお姫様には…。
私が代わりに伝えることができるなら。
「あ、あの、時親様・・・、あの紅枝垂れ桜の木のお姫様は・・・」
私はあの樹での出来事をひとつひとつ丁寧に思い出しながら、お姫様とのやりとりを時親様に話した。