愛しの君がもうすぐここにやってくる。

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その日はとても晴れた日だった。
もう庭の紅枝垂れ桜も散ってしまいそうなくらい、花びらは少しの風でゆっくりと地面に落ちていく。

桔梗さんが「今日はお客様がいらっしゃるので、御簾は下げておきましょうね」
そう言うと上げていた御簾をざっと降ろした。

「お客様って?」
「ほら、あちらからいらっしゃいました」
そう言って指を差す。

その彼女の指先の方を見ると御簾の向こうで、時親様とだれか男の人が話をしながらやって来るのが見えた。

「お客さんってあの人?」
桔梗さんは「確か清原 真宗様とおっしゃいましたか・・・」
と静かに答えた。

清原 真宗・・・。



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