愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「それはどんな?」
「私が妖を囲っているとか、まあ普段でもそういうこともあるし、そう言われたところで気にもかけないのだが・・・。
しかしその妖が紫乃のことで、そしてこの屋敷に取り憑いていると」
は?私のこと妖怪扱いですか?
どこから私が妖怪ってことになってるの。
ふざけるなっていうの。
「それを聞いて・・・、はじめは素知らぬ顔をして過ごしていたが、私が何も言わないことをいいことに、噂は広まって。
紫乃は藤原家の姫君であられるのに、それではあまりにも不憫で。
だから管弦の催しをして紫乃は妖ではなく立派な姫君であると周知させたいと」
静かに時親様が言う。
「あら、あまり拾ってきたものに情を動かされるような時親様ではありませんのに」
「ああ・・・、なぜだろうな」
その時親様の言葉に心臓がドキンと鳴る。
ナゼダロウナ・・・、そう答えた時親様の表情が見たいと思った。
そして私はその言葉を反芻し、普段からそんなことよくあるっていうのなら私のことなんて放っておけばいいのに。
そこまで私のことを気に掛けてくれるって、なんだか・・・。
なんて調子のいいことを考えてしまう。
場違いなことを考えるな、自分。