ウソツキハート



いつもだったら注意するところだけど、店内に他に客はなし。



無駄な労力は使わない主義だ。



と、足音が聞こえてきた。



あたしが品出しをする真後ろに立つ気配がして、



「失礼しました。」



言いながら、体を横にずらした。



と、



「お、新しいの、だな。」



あたしの肩越しに伸びてきた手のひらは、出したばかりのオレンジチョコレートを掴んだ。



ふわっと香る、スウェーデンの澄んだ香水。



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