ウソツキハート



「…あんず。」



あたしを呼ぶあらたの声は、なんだか哀切な響きを持っていて。



訳もなく、泣きたくなる。



「…好きよ…」



目を閉じたまま、囁けば。



「眠れ。」



瞼に落とされた、キス。



あぁ…、あらたが今、どんな顔をしているのか気になるのに、それを眺めることも許されないなんて。



あらたは、ずるい…。



あらたの香りに包まれて眠る。



夢は、見れるだろうか…。



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